「とにかく痛みを取ってほしい」——変形性膝関節症でお悩みの患者様からよくいただく言葉です。当然の思いです。しかし、治療家の視点から見ると、痛みをとるためにまず目を向けるべきものが別にあります。
痛みは主観的なものであり、患者様ご本人にしかわかりません。だからこそ私たち治療家は、痛みを引き起こしている物理的な原因——関節・筋肉・筋膜——の状態に着眼しながら、患者様の痛みの訴えと両方をバランスよく見ていく必要があります。
この記事では、センター北の膝痛専門 こころ整体院 byコレクトの視点から、膝の痛みの治療が本当に目指している「関節の安定化」という考え方と、なぜ施術の途中で一時的に症状が揺れ戻るのかを詳しく解説します。
- 治療家が目指すのは痛みをとることではなく「関節の安定化」
- 筋膜の癒着・筋短縮があると関節が不安定になり、体は筋肉でガチガチに固める(固定)ことで代償する
- その「固定」こそが膝の痛みの根本にあることが多い
- 改善には一度「固定」を解除して意図的に不安定な状態を作る必要がある
- その過程で症状が揺れ戻るのはホメオスタシス(体の恒常性)による正常な反応
- 評価なしの筋トレは「固定」をさらに強めるだけになりやすい
- 施術を受けた翌日に一時的に痛みや違和感が強くなった
- 筋トレを続けているが膝の痛みが改善しない、むしろ動きが硬くなってきた
- 「安静にしていると楽だが、動くとすぐ痛くなる」の繰り返し
- ストレッチをすると少し楽になるが、しばらくするとすぐ元に戻る
- 治療を始めたばかりの頃は症状が揺れることがあると言われた
これらは「固定→不安定化→再安定化」というプロセスの中で起きている現象かもしれません。
痛みと物理的原因——治療家と患者の視点の違い
変形性膝関節症の患者様からすれば、とにかく痛みをなんとかしてほしいというのは当然の思いです。一方で、治療家の視点からは、痛みは主観的なものであり患者様しか感じることができないため、痛みの特定だけに時間を割くことには限界があります。
どちらか一方だけでは不十分です。痛みばかり見ていると原因の特定が難しくなり、物理的な原因ばかり見ていると患者様の「痛みをとってほしい」という本質的なニーズをおろそかにしてしまいます。この両方をバランスよく見ることが大切です。
治療が目指す「関節の安定化」とは
では、治療家が本当に目指しているものは何か。一言で言えば「関節の安定化」です。
家は斜めに建ちません。まっすぐ建っているから安定しています。一人で建てた家でも、しっかり土台があって柱が正しい位置にあれば安定します。膝の関節も同じです。骨・軟骨・筋肉・靭帯・筋膜がそれぞれ正しい位置・状態にあってこそ、関節は安定して機能します。
筋膜の癒着や筋肉の短縮があると、関節の噛み合わせ(アライメント)が崩れます。これが関節の不安定を生み出します。ここに痛みの本当の出発点があります。
安定 vs 固定——体がやってしまうこと
人間の体はどうしても「安定」に向かおうとします。不安定な状態は体にとって不快であり、何とかして安定させようとします。しかし、関節の噛み合わせが崩れたまま(筋膜の癒着・筋短縮がある状態)で安定を求めると、体は筋肉でガチガチに固めるという方法を選びます。
「固定」の状態では一見痛みが軽くなることがあります。しかし実際には関節への余分なストレスが蓄積し続けており、いずれ限界がきて膝の痛み・腰痛・股関節痛・足首痛など他の部位にも痛みが出てきます。
「セメントで固めた状態」が膝の痛みを生む
この「固定」の状態をわかりやすく例えると、「セメントで外から膝をガチガチに固めた状態」です。
関節がグラグラと不安定な状態に対して、体は外からセメントで固めるように筋肉を緊張させ続けます。固めることで動きが制限され、一時的に痛みが出にくくなります。しかしセメントで固めたままでは関節本来の動きができず、内部には慢性的な負荷がかかり続けます。そしてそのセメントが崩れてきたとき——膝の痛みやその他の関節の痛みとして現れます。
- 筋トレは「筋肉で関節を固める力」をさらに強める
- 噛み合わせが崩れたまま(筋膜の癒着・筋短縮がある状態)で筋トレをすると、固定がさらに強まる
- スポーツ選手のテーピングと同じように、強制的に固定することで一時的な安定は得られても根本改善にはならない
- まず評価・原因の特定をした上で、適切なタイミングで取り組むことが重要
なぜ一度不安定にする必要があるのか
「固定」を解消して本来の安定した関節に立て直すためには、まずその「固定」を解除して一度不安定な状態を作る必要があります。
これは怖く聞こえるかもしれませんが、家の建て直しに例えれば理解しやすいです。歪んで固まった状態のまま補強するのではなく、一度適切な状態に戻してから正しく建て直す。この過程が施術における「筋膜リリース・筋短縮の解消」に当たります。
筋膜の癒着を剥がし、短縮した筋肉を本来の長さに戻します。これにより「セメント」が解除され、関節が動けるようになります。この段階では一時的に不安定感・違和感が出ることがあります。
固定が解除されることで、体は一時的に「不安定」な状態になります。これは改善に向かうための必要な過程です。この時期に症状の揺れ・違和感が出ることがありますが、これは副作用であり悪化ではありません。
正しいアライメントと筋力のバランスが整った状態で、関節を本来の「安定」に向かわせます。この段階で初めて筋力トレーニングが効果的に機能します。
揺れ戻し(ホメオスタシス)について
改善に向かう過程で「一時的に症状が戻った」と感じることがあります。これを「揺れ戻し(ホメオスタシス)」と呼びます。
ホメオスタシスとは体の恒常性——つまり「今の状態を維持しようとする働き」です。体は変化を嫌い、今まで慣れ親しんだ「固定」の状態に戻ろうとします。
筋膜リリースで「固定」が解除される→体は「不安定になった」と感じ、元の固定状態に戻ろうとする→一時的に症状が強くなったように感じる。これは体が変化に抵抗している正常な反応です。この揺れ戻しを越えることで、次第に本来の安定した状態へと変化していきます。
🔬 ホメオスタシスと膝の痛みの再発の関係
ホメオスタシスは医学的に「恒常性」と呼ばれ、体が内部環境を一定に保とうとする生理的メカニズムです。膝の治療においては、長年の「固定」パターンが体に染み込んでいるため、これを変えようとするたびに体は元の状態に戻ろうとします。
これが「膝の痛みが再発しやすい理由」の一つでもあります。施術だけでなく、日常生活のセルフケア(ストレッチ・歩き方の改善・筋力強化)を継続することで、新しい「安定パターン」を体に定着させていくことが重要です。
やってはいけないNG行動
- 評価なしで筋トレを始める:噛み合わせが崩れたまま(筋膜の癒着・筋短縮がある状態)での筋トレは「固定」をさらに強め、根本改善にならないことがあります
- 揺れ戻しで「悪化した」と判断してケアをやめる:施術後の一時的な症状の揺れはホメオスタシスによる正常な反応です。やめるべきかどうかは専門院で確認してください
- 痛みがないからといって固定された状態のまま放置する:「固定」による仮の安定は、いずれ膝以外の部位の痛みとして現れます
- 安静にするだけで何もしない:安静は急性炎症期には有効ですが、長期的には筋力低下・さらなる固定化を招きます
- 痛みが取れたらケアをやめる:痛みが取れた状態はゴールではありません。本来の安定した関節が定着するまで継続することが重要です
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byコレクトのアプローチ——固定を解除して安定化へ
筋膜の癒着を剥がし筋短縮を解消するだけでなく、固定を解除した後の不安定期を乗り越えて本来の安定した関節に立て直すところまでを一体として行います。
超音波エコーで筋膜の癒着・筋短縮・関節周囲の状態をリアルタイムに確認します。どこに「セメント」が詰まっているかを可視化し、解除すべき部位を個別に特定します。
特定した癒着部位の筋膜をリリースし、短縮した筋肉を本来の長さに戻します。「固定」が解除されることで、関節が本来の動きを取り戻します。揺れ戻しが出る場合もありますが、丁寧に経過を確認しながら進めます。
アライメントを整え、正しい状態での筋力強化を行います。自宅でのセルフケア・ストレッチも個別に指導し、新しい「安定パターン」を日常生活に定着させます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 施術後に一時的に痛みが出たのですが、悪化していますか?
多くの場合は「揺れ戻し(ホメオスタシス)」によるものです。体が固定を解除されたことで一時的に不安定感・違和感が出る正常な反応です。ただし痛みが非常に強い・腫れや熱感がある場合は別の原因が考えられるため、すぐに専門院に確認してください。
Q2. 筋トレは膝に良くないですか?
筋トレ自体が悪いわけではありません。重要なのは「評価・原因の特定をした上で、適切なタイミングと方法で行うこと」です。筋膜の癒着・筋短縮が残ったままの筋トレは「固定」をさらに強めるリスクがあります。まず固定を解除してから筋力強化に取り組むことが効果的です。
Q3. 「安定」と「固定」の違いを教えてください。
安定は「正しいアライメントの中で関節が適切に動ける状態」です。固定は「噛み合わせが崩れたまま筋肉でガチガチに締め付けて動きを制限した状態」です。固定では一時的に痛みが出にくくなりますが、内部への慢性的な負担は続きます。
Q4. 揺れ戻しはどのくらい続きますか?
個人差や問題の深さによって異なりますが、多くの場合は数日から1週間程度で落ち着きます。施術を繰り返す中で揺れ戻しの幅は小さくなっていくのが一般的です。
Q5. ホメオスタシスに逆らうことはできますか?
完全に逆らうことはできませんが、日常生活でのセルフケア(ストレッチ・歩き方の改善・適切な筋力強化)を継続することで、新しい「安定パターン」を体に定着させていくことができます。施術と日常のセルフケアを組み合わせることが最も効果的です。
Q6. 腰痛や股関節痛も膝の「固定」と関係していますか?
はい、深く関係しています。膝が「固定」された状態では、膝が担うべき動きを腰・股関節・足首が補う形になり、これらへの過負荷が蓄積します。これが腰痛・股関節痛・足首痛として現れることがあります。膝の固定を解除することでこれらの痛みも改善するケースがあります。
センター北・横浜市都筑区で膝の痛みにお悩みの方へ
センター北周辺エリアでも、「施術を受けたら一時的に症状が強くなった」「筋トレを続けているのに改善しない」「痛みが取れてもすぐ戻る」というご相談を多くいただきます。これらは「固定」の解除と「安定化」のプロセスを正しく理解していなかったことが一因であることが少なくありません。
膝痛専門 こころ整体院 byコレクトは、センター北駅からすぐの場所にある膝の痛みに特化した専門院です。エコー検査で「固定」の原因を可視化し、固定の解除から本来の安定化まで一体として取り組みます。
膝痛専門 こころ整体院 byコレクトは、こころ整体院グループの一員です。グループ全体の症状別ガイドや研究実績もご覧いただけます。
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まとめ
治療家が目指すのは「痛みを取ること」ではなく「関節の安定化」です。筋膜の癒着・筋短縮があると関節が不安定になり、体は筋肉でガチガチに固める「固定」に向かいます。この固定こそが膝の痛みの根本にあることが多く、改善するには一度固定を解除して不安定な状態を作り、そこから本来の安定に立て直す必要があります。
途中で症状が揺れることは、ホメオスタシスによる正常な反応です。この過程を正しく理解して継続することが、長年改善しなかった膝の痛みを根本から変えるための道筋になります。
- 「痛みがない=治った」ではなく「関節が本来の安定を取り戻したか」で判断する
- 筋トレを始める前に、評価・原因特定を先に行う
- 施術後に症状が揺れた場合は、悪化ではなくホメオスタシスの可能性を考える
- 日常のセルフケア(ストレッチ・歩き方)を継続して新しい安定パターンを定着させる
- 痛みが取れてもしばらくはケアを継続し、安定化を定着させる
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参考文献
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- Powers CM. "The influence of abnormal hip mechanics on knee injury: a biomechanical perspective." Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2010; 40(2): 42–51.
柔道整復師|人間科学修士
2006年にこころ整骨院を創業し、現在は国内外164拠点のヘルスケア事業を統括。臨床と経営の傍ら東亜大学大学院にて人間科学修士号を取得し、2025年に国際学術誌『PLOS ONE』に筋膜トリガーポイントと肩甲骨アライメントに関する研究論文を筆頭著者として発表。科学的根拠に基づく独自メソッド「GIFT」を開発。
- 研究者ID (ORCID): 0009-0002-5707-6121
- 主要論文 (PLOS ONE): Relationship between the asymmetry of the resting scapular position...







