ゴルフのあとに腰が痛むとき、負担が集まっているのは腰そのものではなく、前になる脚(リード脚)の股関節であることが少なくないと報告されています。 プロゴルファー42名を調べた研究では、33%に2週間以上続く腰の痛みの経験があり、その方たちはリード脚側の股関節の内旋(内向きのひねり)と腰の反りの可動域が有意に小さいという関連が示されました(Vad ら, 2004)。アマチュアを対象にした調査でも、腰痛がある群のリード脚側の股関節の内旋は平均21.1度で、痛みのない群の31.1度より小さいという結果が出ています(Murray ら, 2009)。つまり、右打ちの方であれば注目したいのは左の股関節で、痛む場所が右腰か左腰かによって見直す順番も変わってきます。この記事では、痛み方で分かれる3タイプの見分け方、ラウンド当日からの過ごし方、腰を痛めにくい体の使い方まで順にまとめます。
こちらは全国125店舗・年間延べ80万人の患者様に向き合ってきたこころ整体院グループによる、ゴルフによる腰の痛みの解説記事です。AI姿勢分析とGIFTメソッドで、痛む腰だけでなく股関節・骨盤・姿勢まで確かめ、ひねりの負担が一か所に集まるクセへアプローチします。
⚠️ こんなときは医療機関へ|ゴルフのあとの腰の痛みで見逃したくないサイン
ゴルフのあとの腰の痛みは、多くが腰まわりの筋肉や関節にかかった負担と体の使い方のクセによるものと考えられています。一方で、次のようなサインが重なるときは、骨や神経、体の内側の問題が隠れていることがあります。自己判断で様子を見ず、まずは医療機関で評価を受けてください。
- 横になって安静にしていても痛みが引かない・夜中に痛みで目が覚める(姿勢を変えても痛みの強さが変わらない)
- 脚のしびれが広がる・脚に力が入らない・つまずきやすくなった
- 排尿や排便がしにくい感覚がある・おしりまわりの感覚が鈍い
- 発熱・悪寒をともなう/血尿が出た・尿がにごる・わき腹から下腹部へ波のように押し寄せる強い痛みがある
- ティーグラウンドやバンカーで転倒した・カートから落ちたなど、はっきりしたけがのあとから痛みが続いている
- 反らすと強く痛む状態が2週間以上続く、または10代〜20代の方で反らす動きだけが強く痛む
- 大きなご病気で通院中の方、骨がもろくなりやすいと言われたことがある方で、急な強い痛みが出た
とくに、安静にしていても痛みが変わらない・脚のしびれや力の入りにくさが広がる・排尿や排便の感覚が変わったという組み合わせは、腰まわりの負担では説明しにくいサインのことがあり、早めの評価が望まれます。反らす動きだけが強く痛む状態が長く続く場合は、腰の後ろ側の骨に負担が積み重なっているサインのことがあり、練習を続けたまま様子を見るのは避けたい状況です。
これらに当てはまらず、「スイングの途中や翌朝に張りとして出る」「前かがみや反る動きで痛み、らくな姿勢を見つけると軽くなる」という出方が中心であれば、ひねりの負担が腰へ集まっている状態と、体の使い方のクセが関係していることが多いと考えられます。ここから先は、その場合の見直し方をまとめています。判断に迷うときは、我慢して続けずにご相談ください。
ゴルフの腰痛はなぜ起こる?腰ではなく股関節から見直す理由
ゴルフのスイングは体をねじる動きですが、ねじりを担当する主役は腰ではなく股関節と胸まわりの背骨で、股関節の動きが足りないぶんを腰が肩代わりしたときに痛みとして表面化しやすいと考えられています。 「腰を回して打て」という言い方が広く使われているぶん、腰そのものを回そうとしてしまう方が少なくありません。腰の骨(腰椎)は前後に曲げ伸ばしする動きは得意な一方で、ねじる動きはもともと大きく取れない構造です。ねじりの大半は股関節と胸まわりの背骨が引き受けています。
この関係を裏づける調査があります。プロゴルファー42名を対象にしたVadらの研究(2025年ではなく2004年・Am J Sports Med)では、33%に2週間以上プレーに影響する腰の痛みの経験があり、痛みの経験がある群はリード脚(スイングで前になる脚。右打ちなら左脚)側の股関節の内旋、FABERE距離、腰の反りの可動域が有意に小さいという関連が示されました。後ろ脚側の股関節では有意な差が出ていないのが、この研究のもうひとつの要点です。
アマチュアを対象にしたMurrayらの調査(2009年・Phys Ther Sport)でも同じ傾向が出ています。腰痛がある28名とない36名を比べたところ、リード脚側の股関節の内旋は他動で平均21.1度(痛みのない群は31.1度)、自動では21.5度(同28.1度)と小さく、後ろ脚側や外向きのひねりには差がありませんでした。なお、この調査は因果関係を示したものではありません。それでも「腰が痛いときに見直す場所として、前になる脚の股関節が候補に挙がる」という手がかりとしては十分に使えます。
腰は「回す」より「支える」ことが得意な部分
体の関節には得意な役割があり、股関節は大きく動く役、腰は上下からの力を受け止めて安定させる役を担っています。股関節が動かないままスイングすると、上半身は回りたい方向へ進もうとするため、腰が代わりにねじられます。腰痛そのものを揉んだり伸ばしたりしても翌週のラウンドでまた同じ場所が痛くなるのは、ねじりの担当が変わっていないからだと整理できます。だからこそ、腰まわりの張りをやわらげることと並行して、股関節の動く範囲を戻す順番が大切になります。
右側が痛い人と左側が痛い人の違い|痛む場所でわかる負担のかかり方
右打ちの方で右の腰が痛むときはトップから切り返しにかけての「ひねりの詰まり」、左の腰が痛むときはインパクトからフィニッシュにかけての「反りとねじりの集中」が背景にあることが多く、見直す順番が変わります。 どちら側が痛いかは、スイングのどの局面で腰が肩代わりしているかを教えてくれる手がかりになります。ここでは右打ちを前提に整理します(左打ちの方は左右を入れ替えてお読みください)。
右打ちで右の腰が痛むとき
バックスイングで上半身を右へ回していく局面では、右の股関節に体重が乗りながら骨盤が回ります。ここで右の股関節が硬いと、骨盤が回りきらないまま上半身だけが回ろうとするため、腰の右側でねじりを受け止めることになります。「トップでこれ以上回らない詰まり感がある」「バックスイングの途中で右の腰にキュッとくる」という方は、この形に当てはまりやすくなります。見直す順番は、右の股関節の外向きのひねりと胸まわりの背骨の回旋です。腰を無理に回そうとするほど、詰まりは強くなります。
右打ちで左の腰が痛むとき
切り返しからインパクト、フィニッシュにかけては、左脚(リード脚)に体重が移り、その上で骨盤が左へ回っていきます。左の股関節の内向きのひねりが足りないと、骨盤が回りきらないぶんを腰が反りながらねじる形で補うことになり、腰の左側や背骨の後ろ側に力が集まります。「フィニッシュで腰が反りすぎる」「打ち終わったあとに左の腰が張る」という方はこの形です。先ほどの2つの研究がそろって指摘していたのが、まさにこのリード脚側の股関節の内旋でした。左の股関節の内向きのひねりを戻すことが最優先になります。
左右どちらでも共通して確かめたいこと
右腰・左腰のどちらであっても、共通して確かめたいのは骨盤が前後に倒れる動き(ヒップヒンジ)が使えているかです。アドレスで骨盤が倒れず、背中を丸めたり腰を反らせたりして前傾を作っていると、スイングが始まる前から腰に負担が集まった状態になります。骨盤の傾きや左右差は自分では気づきにくいところなので、動画で自分のアドレスを横から撮っておくと確認しやすくなります。
あなたはどのタイプ?ゴルフの腰痛3タイプと見分け方
ゴルフのあとの腰の痛みは、痛みが出る局面と痛む向きで大きく3つのタイプに分けられ、タイプごとに避けたい動きと先に戻したい動きが変わります。 「どの動きで痛むか」を手がかりにすると、自分がどれに近いか整理しやすくなります。当てはまるものが2つある方は、両方の見直しを並行して進めてかまいません。
タイプ①:ひねり詰まり型(トップで止まる)
バックスイングの途中で「これ以上回らない」という詰まりを感じ、無理に回すと腰の右側に張りが出るタイプです。長時間のデスクワークや運転で股関節と胸まわりが固まっている方に多く見られます。特徴は、ラウンド中よりも打ちっぱなしで球数を打った日に強く出ることです。腰をひねるストレッチを足すよりも、股関節の外向きのひねりと胸を開く動きを先に戻すほうが、詰まりは軽くなりやすくなります。
タイプ②:反り返り型(フィニッシュで反る)
フィニッシュで胸を張るように腰が反り、打ち終わったあとや翌朝に腰の左側から真ん中にかけて重い張りが残るタイプです。飛距離を出そうとして体を大きく使う方、体幹を支える力が落ちている方に出やすい形です。特徴は、前かがみよりも「反らす」動きで痛みが強くなることです。反る動きで痛みが強いまま練習を続けるのは避けたい状況なので、まずは反りの量を抑えたフィニッシュに整えることから始めます。
タイプ③:前かがみ型(アドレスで丸まる)
アドレスの時点で背中が丸まり、腰から前へ折れる形で前傾を作っているタイプです。ラウンドの後半になるほど腰が重くなり、翌朝に靴下を履く動作や洗面台での前かがみがつらくなります。特徴は、反らす動きより「前へかがむ」動きで痛みが出ることです。バンカーならしやカップ際のボール拾いなど、スイング以外の前かがみの回数が多い日にも出やすくなります。骨盤から倒す前傾に作り替えると、同じスイングでも腰の負担の集まり方が変わります。
ラウンド当日から翌日の過ごし方|冷やす・温めるの切り替えの目安
ラウンド当日は熱っぽさが残っているかどうかで冷やすか温めるかを決め、翌日以降に重だるさが中心になってから温めへ切り替えると、回復の遠回りを避けやすくなります。 「腰は温めるもの」という印象が強いため、痛くなったその日に長風呂やサウナで温めてしまう方が少なくありません。押すと熱っぽい、じっとしていてもズキズキするという時期に強く温めると、張り感が増しやすいと考えられています。
プレー直後から当日にかけては、痛みの出た部分にタオル越しの保冷剤を10〜15分ほど当て、間を空けて繰り返します。入浴は短めのシャワーで済ませ、長風呂は翌日以降に回します。ゴルフのあとの席でお酒が入ると、体が温まって痛みを感じにくくなるぶん、動きすぎてしまうことがあります。乾杯の前に1分だけ、あおむけで両ひざを左右にゆっくり倒す動きを入れておくと、固まったまま眠るより翌朝の動き出しがらくになります。
翌日以降、熱っぽさが引いて「動きはじめの固さ」や「重だるさ」が中心になったら、腰から骨盤にかけてを温める方向へ切り替えます。入浴で温めたあとに、痛みが増えない範囲で軽く体を動かすところまでを1セットにすると、固まり直しを防ぎやすくなります。安静にし続けるより、痛みの出ない範囲で小さく動き続けるほうが回復は進みやすいとされています。
どれくらいで和らぐ?回復の目安と練習を再開してよい目安
ひねりの負担による腰の張りは、負担を減らす過ごし方を続けると数日から2週間ほどをかけて段階的に和らいでいくことが多いとされています。 目安として、痛みが強い最初の2〜3日は日常生活を優先し、痛みが走る動きだけを避けます。動きはじめの固さが中心になってきたら、歩く時間を戻し、股関節のセルフケアを加えていきます。
練習の再開は、「痛みなく前かがみと反りができる」「痛みなく体をねじれる」「その動きを翌日に持ち越さない」の3つがそろってからが目安です。再開の順番は、パター、アプローチ、ハーフスイング、フルスイングと段階を分けます。いきなりドライバーでフルスイングに戻すと、いちばん負担の大きい局面から再開することになります。2週間ほど整えても軽くならない、痛む範囲が広がる、脚のしびれが出てきたという場合は、店舗や医療機関でご相談ください。
【自分でできる】腰を守る股関節セルフケア|ラウンド前・ラウンド後・自宅
ここからは、ゴルフの前後とご自宅でできるセルフケアを3つと、使い分けの目安をご紹介します。 痛みのない範囲で、呼吸を止めずにゆっくり行うのが基本です。痛みが強い時期は無理に行わず、らくな姿勢での安静を優先してください。腰そのものをひねる動きではなく、股関節とお尻を目的にしているのがこの3つの共通点です。
1. ヒップヒンジの確認(骨盤から倒す前傾を覚える)
- 足を肩幅に開いて立ち、両手を足の付け根(脚と胴体の境目)に当てます。
- 手を挟み込むように、お尻を後ろへ引きながら上体を前に倒します。背中はまっすぐのままにします。
- ももの裏が突っぱる手前で止め、ゆっくり戻します。10回をゆっくり行います。
タイプ③(前かがみ型)の方にとくに向いています。腰から折れずに骨盤から倒せているかを、横から動画に撮って確かめると分かりやすくなります。壁の前に立ち、お尻が壁に触れる位置で行うと感覚をつかみやすくなります。
2. 股関節の内向きのひねりを戻すワイパー運動とランジ
- 床に座って両ひざを立て、足は肩幅より広めに開きます。
- 両ひざをそろえたまま左右にパタンパタンとゆっくり倒します。左右20回を目安にします。
- 続けて片ひざ立ちになり、前の脚に体重を預けて後ろ脚の付け根を伸ばします。左右20秒ずつ行います。
ワイパー運動は股関節の内向きのひねり、ランジは付け根の前側を目的にしています。研究で腰の痛みとの関連が示されていたのはリード脚側の内向きのひねりなので、右打ちの方は左の股関節が倒れにくくないかを左右で比べてみてください。倒しにくい側があれば、その側を少し多めに行います。
3. お尻のスイッチを入れるヒップリフト
- あおむけで両ひざを立て、足の裏を床につけます。
- 腰を反らせる力ではなく、お尻を締める力で骨盤を持ち上げます。
- いちばん高い位置で3秒キープしてから、背骨を上から順に下ろすようにゆっくり戻します。10回を目安にします。
お尻の大きな筋肉は、スイングの土台になる部分です。持ち上げたときに腰が反ってしまう方は、高さを半分にして、お尻を締める感覚だけを確かめます。タイプ②(反り返り型)の方は、高く上げることより「腰ではなくお尻で持ち上がっているか」を優先してください。
4. ラウンド前・ラウンド後・自宅での使い分け
同じ3つでも、行う場面で目的が変わります。ラウンド前は体を温めて動く範囲を広げたいので、ワイパー運動とランジを軽く、動きを止めずに行います。ラウンド後は固まったまま帰らないことが目的なので、ワイパー運動だけを1分ほど。自宅は動く範囲を戻すことが目的なので、3つをひととおり行います。道具を使うなら、丸めたバスタオルをお尻の下に敷いてワイパー運動の可動を確かめる、ストレッチポールに背中を乗せて胸まわりを開く、といった使い方が扱いやすくなります。週に1回のラウンドだけで動きを取り戻すのは難しいので、平日に短く分けて続けるほうが積み上がります。
腰を痛めにくいアドレスとスイングの整え方|S字姿勢・C字姿勢の見直し
腰の負担は振り方より先に、アドレス(構え)の作り方で決まっている部分が大きく、骨盤から倒す前傾に整えるだけでねじれの集まり方が変わります。 ゴルフの現場では、アドレスで腰が反りすぎている構えを「S字姿勢」、背中が丸まっている構えを「C字姿勢」と呼び分けることがあります。どちらも、股関節から倒す前傾が作れていないときに起こりやすい形です。
反りすぎ(S字姿勢)の整え方
お尻を突き出そうとするあまり、腰だけが反ってろっ骨が前へ出ている状態です。この構えのままスイングすると、フィニッシュでさらに反りが足され、腰の後ろ側に力が集中します。整え方は、骨盤を倒すのではなく「みぞおちを軽く下げる」意識を1つ足すことです。息を吐きながらろっ骨を軽く閉じ、その位置で前傾を作り直します。反りが減ったぶん体をねじりやすくなるので、飛距離を犠牲にする整え方ではありません。
丸まり(C字姿勢)の整え方
背中を丸めて上体を下ろしているため、股関節が使えず、上半身をねじる余地も残りません。整え方は、先ほどのヒップヒンジをアドレスにそのまま持ち込むことです。お尻を後ろへ引きながら上体を倒し、胸を張るのではなく背骨をまっすぐに保つのが目安です。ボールとの距離が近すぎても丸まりやすくなるため、クラブの長さに合わせた立ち位置も一緒に確かめます。「もっと腰を回せ」という言葉を意識するほど腰が痛くなる方は、回す場所を腰から股関節と胸まわりへ移すだけで、同じ振り幅でも負担が変わります。
腰用ベルト・サポーターとカート・キャディバッグの使い方の目安
腰用のベルトやサポーターは、痛みが出ている数日間の「動く場面」に絞って使うと扱いやすく、一日中つけ続ける道具ではありません。 支えは腰を休ませる時間をつくるためのもので、締めているあいだは腰を支える筋肉の出番が減ります。動ける範囲が戻ってきたら、使う時間を少しずつ減らしていきます。深く呼吸ができる強さに調整し、休んでいるあいだは外します。
ラウンド中の道具の扱いも、腰の負担に直結します。キャディバッグを地面から持ち上げるとき、体をひねりながら引き上げるのがいちばん負担の大きい動きです。バッグの正面に立ち、ひざを曲げて体に近づけてから持ち上げるだけで、腰にかかるねじれは減ります。カートを使う日は、乗り降りのたびに横向きのまま体をひねって降りないよう、いったん体ごと向きを変えてから降りるようにします。ボールを拾う動作も1ラウンドで何十回にもなるため、ひざを使って腰から折れない拾い方に変えておくと、後半の重だるさが変わってきます。
繰り返さないための予防と再発の見直し|長引くときに確かめること
ゴルフの腰の痛みは、痛みが引いたあとにスイングと生活の両方を見直せているかで、次のラウンドの結果が変わります。 痛みが軽くなるとセルフケアをやめてしまい、翌月のラウンドでまた同じ場所が痛くなる——という往復をしている方が少なくありません。予防で押さえたいのは次の4点です。
- ラウンド前の準備を「素振り」から「股関節を動かす」へ変える:素振りだけでは股関節の動く範囲は戻りません。ワイパー運動とランジを合わせて3分取ります。
- 球数と時間を先に決める:打ちっぱなしで「もう一かご」を重ねた日ほど、翌朝に出やすくなります。時間で区切るほうが守りやすくなります。
- 平日の座り時間を分ける:デスクワークが続くと股関節の前側が固まります。30分に1回、立ち上がって3歩歩くだけでも固まり方は変わります。
- 左右差を残さない:ゴルフは片方向にねじるスポーツです。ワイパー運動やランジで、倒しにくい側・伸びにくい側を多めに行って左右をそろえます。
長引くときに確かめたいこと
2週間ほど整えても軽くならないときは、痛む場所ではなく負担の集まり方そのものを見直す段階です。股関節の動きが左右でそろっているか、アドレスの前傾が骨盤から作れているか、胸まわりの背骨が回るか——この3つのどれかが残っていると、腰の張りだけを取っても同じ位置に戻ります。おしりから脚へ響く感覚が出てきた、動きはじめだけでなく安静時も痛むようになった、という変化があるときは、早めに評価を受けてください。ぎっくり腰のように動いた瞬間に強い痛みが走ったときの過ごし方は、ぎっくり腰のページにまとめています。
【詳しく知りたい方へ】ゴルフの腰痛が起こる医学的メカニズム
ゴルフの腰の痛みは単一の原因ではなく、ねじりの担当のかたより・腰にかかる力の種類・姿勢のクセという3つが重なって起こると整理できます。 ここでは少し詳しく、背景を3つに分けて見ていきます。
1. ねじりの担当がかたよる(運動連鎖)
体は、大きく動く関節と支える関節が交互に並ぶことでなめらかに動きます。股関節は大きく動く役、腰は支える役です。股関節の動く範囲が減ると、上半身が回る量は変わらないまま、腰のねじれ量だけが増えます。Vadら(2004)とMurrayら(2009)がそろってリード脚側の股関節の内旋だけに差を見つけ、後ろ脚側では差が出なかったことは、この肩代わりが特定の局面で起きていることを示しています。だから整体では、腰の張りをやわらげることと、股関節の動く範囲を戻すことを同時に進めます。
2. 腰にかかる力は「圧縮」だけではない
腰にかかる力は、上から押さえつける圧縮の力だけではありません。骨と骨を横にずらそうとする力(せん断力)や、ねじろうとする力も同時にかかります。腰の骨の後ろ側にある関節は、ねじりの角度が増えるほど当たりが強くなる構造です。前傾したまま速くねじるスイングでは、この3つの力が同じ瞬間に重なります。ご自宅では、ねじる動きを腰で作らず股関節と胸まわりで作り分けることが、そのまま負担を分ける工夫になります。
3. 姿勢のクセが土台にある
アドレスの前傾の作り方、日常の座り方、片側だけにバッグをかける習慣——こうしたクセは、スイングを始める前の骨盤と背骨の位置を決めています。姿勢の崩れが土台にあると、同じスイングでも負担の集まる場所が偏ります。こころ整体院グループでは、Googleの骨格推定をベースに東亜大学との共同研究で独自に組み立てたAI姿勢分析で、骨盤の傾き・背骨のカーブ・左右差を数値と画像で確かめ、どこから手をつけると続けやすいかを一緒に考えていきます。
GIFTの視点:揉まない・押さない、ゴルフの腰痛へのアプローチ
こころ整体院グループのGIFTメソッドは「揉まない・押さない・整える」を基本に、ねじりの負担を腰へ集めている姿勢のクセを整えます。 GIFTメソッドは、Gliding(なでるように動かす)・Inner(深部へのアプローチ)・Form(姿勢・フォームを整える)・Trigger(こり固まったポイントへの働きかけ)の頭文字で、強く押しほぐすのではなく、動きの担当を戻していく整え方です。
ゴルフのあとの腰の痛みでは、痛む腰そのものより先に、股関節の動く範囲と骨盤の傾きを確かめます。こころ整体院グループは「大学と共同研究する整体院」として、東亜大学との共同研究の成果を国際学術誌 PLOS ONE(2025年)に発表しています。全国125院・年間延べ80万人来院規模のグループとして、断定はせず、AI姿勢分析で見えたズレをもとに一緒に順番を決めていきます。なお研究は状態を理解するためのもので、特定の結果をお約束するものではありません。
⚠️ やってはいけない!ゴルフの腰痛3つのNG行動
NG①:痛む腰を無理にひねって伸ばす
張っている場所を伸ばしたくなりますが、痛みが出ているときに腰をひねる動きを足すと、負担の集まっている場所にもう一度ねじりを加えることになります。伸ばすなら、腰ではなく股関節とお尻、胸まわりの背骨です。ワイパー運動とランジは、腰をひねらずに股関節を動かせる組み合わせです。
NG②:痛み止めを使って予定どおりラウンドする
コンペや接待で予定が決まっていると、痛みを抑えてでも回りたくなります。痛みの感じ方が変わっても、腰にかかる力そのものは変わりません。感覚が鈍いぶん、いつもより大きく振ってしまうこともあります。反らすと強く痛む状態が続いているときは、続けるかどうかを先に相談するほうが、結果として休む期間は短くなります。
NG③:「様子見」のまま練習量を増やす
「振っていれば慣れる」と球数を増やすと、肩代わりしている腰に同じ負担が積み上がります。とくに反らす動きだけが強く痛む状態が2週間以上続くときは、練習を続けたまま様子を見るのは避けたい状況です。休むことも整えるうちに入ります。痛みが引くまでは、パターとアプローチだけに絞って続けるという選び方もあります。
まとめ
ゴルフのあとの腰の痛みは、腰そのものより前になる脚(リード脚)の股関節から見直すと道筋が立ちます。プロ・アマチュアいずれの調査でも、腰の痛みと関連が示されたのはリード脚側の股関節の内向きのひねりで、後ろ脚側には差が出ていませんでした。右打ちで右腰が痛むならトップの詰まり、左腰が痛むならフィニッシュの反りとねじれ——痛む場所は、どの局面で腰が肩代わりしているかを教えてくれます。当日は熱っぽさがあるうちは冷やし、翌日以降に温めへ切り替える。落ち着いたらヒップヒンジ、ワイパー運動とランジ、ヒップリフトの順に戻していく。反らすと強く痛む状態が続くときは、練習を続けたまま様子を見ないでください。一生続けたい趣味だからこそ、痛みが引いたあとにこころ整体院グループのお近くの院で、AI姿勢分析を起点に股関節と姿勢を確かめてみてください。
- ゴルフによる体の不調:スイングで起こる腰・肩・肘の負担と、整体での考え方。
- 腰痛:急性から慢性まで、腰の痛み全般の考え方とケアの基本。
- 股関節:股関節の固さが腰のひねりへ与える影響と整え方。
- ぎっくり腰:動いた瞬間に強い痛みが走ったときの初動と過ごし方。
- 骨盤矯正:骨盤の傾き・左右差と、片側への負担の関係。
- 坐骨神経痛:おしりから脚へ響く感覚が出るときの見直し。
- 姿勢矯正・猫背・巻き肩:アドレスの前傾と腰への負担のつながり。
よくある質問(FAQ)
スイングのねじりを担当するのは股関節と胸まわりの背骨で、腰は支える役です。股関節の動く範囲が足りないと、そのぶんを腰がねじって肩代わりすることになり、痛みとして表面化しやすくなります。プロゴルファー42名を調べた研究では、腰の痛みの経験がある方は前になる脚側の股関節の内向きのひねりが有意に小さいという関連が示されました。
まず、安静にしていても痛むか、脚のしびれや力の入りにくさがないかを確かめてください。当てはまらず、動いたときだけ痛むという出方であれば、痛みが走る動きを避け、らくな姿勢を確保します。押すと熱っぽい時期はタオル越しに10〜15分ほど冷やし、長風呂は避けて短めのシャワーで済ませます。
ラウンド前の準備を素振りだけにせず、股関節を動かす時間を3分ほど取ることです。あおむけや床に座っての左右パタパタ(ワイパー運動)と、片ひざ立ちのランジを組み合わせます。あわせて、アドレスの前傾を腰から折るのではなく骨盤から倒す形に整えると、スイングを始める前の負担が減ります。
押すと熱っぽさがある・じっとしていてもズキズキするという時期は、タオル越しに10〜15分ほど冷やすのが目安です。翌日以降、熱っぽさが引いて動きはじめの固さや重だるさが中心になったら、腰から骨盤を温める方向へ切り替えます。当日の長風呂やサウナは、張り感が増しやすいため避けたい過ごし方です。
右打ちの場合、右腰が痛むときはバックスイングで骨盤が回りきらない「詰まり」が背景にあることが多く、右の股関節の外向きのひねりと胸まわりの回旋を見直します。左腰が痛むときはフィニッシュで反りとねじれが重なっていることが多く、左(前になる脚側)の股関節の内向きのひねりを戻すことが先になります。左打ちの方は左右を入れ替えてお読みください。
ひねりの負担による張りは、負担を減らす過ごし方を続けると数日から2週間ほどで段階的に和らいでいくことが多いとされています。再開の目安は、痛みなく前かがみと反りができ、痛みなく体をねじれ、それを翌日に持ち越さないことの3つです。パター、アプローチ、ハーフスイング、フルスイングの順に段階を分けて戻します。
支えは腰を休ませる時間をつくる道具なので、痛みが強い数日の「動く場面」に絞る使い方が扱いやすくなります。深く呼吸ができる強さに調整し、休んでいるあいだは外します。長く締め続けると腰を支える筋肉の出番が減りやすいため、動ける範囲が戻ってきたら使う時間を少しずつ減らしていきます。
お尻を突き出そうとして腰だけが反り、ろっ骨が前へ出ている状態が考えられます。息を吐きながらみぞおちを軽く下げ、ろっ骨を閉じた位置で前傾を作り直してみてください。反りが減ると体をねじれる余地が増えるため、振り幅を狭める整え方にはなりません。横から動画を撮って、骨盤から倒せているかを確かめると分かりやすくなります。
目的が違うので、どちらも役割があります。ラウンド前は動く範囲を広げたいので、動きを止めずに行うワイパー運動とランジを軽めに。ラウンド後は固まったまま帰らないことが目的なので、ワイパー運動を1分ほど行います。ご自宅では3つをひととおり行い、倒しにくい側・伸びにくい側を少し多めにして左右をそろえます。
こころ整体院グループでは、AI姿勢分析で骨盤の傾き・背骨のカーブ・左右差を確認し、痛む腰だけでなく股関節・骨盤・胸まわりを含めて整えるGIFTメソッドでサポートします。痛みが強い時期は負担を減らす過ごし方のご案内が中心になります。詳しくは全国の店舗からお近くの院にお問い合わせください。
参考文献
- Vad VB, Bhat AL, Basrai D, Gebeh A, Aspergren DD, Andrews JR. "Low back pain in professional golfers: the role of associated hip and low back range-of-motion deficits." American Journal of Sports Medicine, 2004; 32(2): 494-497. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Murray E, Birley E, Twycross-Lewis R, Morrissey D. "The relationship between hip rotation range of movement and low back pain prevalence in amateur golfers: an observational study." Physical Therapy in Sport, 2009; 10(4): 131-135. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 公益社団法人 日本整形外科学会「腰椎(こし)の症状一覧」一般向け解説. joa.or.jp
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」(自覚症状の状況・性別/症状別の有訴者率). mhlw.go.jp
執筆・監修者
安藝 泰弘(あき やすひろ)
柔道整復師/giversホールディングス 代表取締役・東亜大学大学院 博士課程
こころ整体院グループ 創業者(本記事の執筆・総監修)
ORCID: 0009-0002-5707-6121
1996年柔道整復師資格取得。臨床28年・延べ施術人数15万人超。2025年に国際学術誌 PLOS ONE へ姿勢分析に関する研究論文を筆頭著者として発表(健康な成人における安静時肩甲骨位置の非対称性と僧帽筋上部の潜在性トリガーポイントとの関連・PLOS ONE 20(10): e0335268 / https://doi.org/10.1371/journal.pone.0335268)。「揉まずに整える」GIFTメソッドを開発し、全国125院・年間延べ80万人来院規模の整体院グループへと育てた。
村石 喜伸(むらいし よしのぶ)
理学療法士/Fascial Manipulation®・Mulligan Concept 国際資格/givers PT 代表
本記事の専門監修を担当。ゴルフのスイングで腰へねじれが集まる仕組みと、股関節の動きを戻すセルフケアの進め方を運動器の視点から監修。







