「階段を降りるとき突然膝の内側がズキッとした」「バキッという音がして膝が痛くなった」——このような突発的な膝の内側の痛みは、内側半月板後根断裂(MMPRT:Medial Meniscus Posterior Root Tear)の可能性があります。センター北・横浜市都筑区エリアでも、こうした症状をお持ちの方がいらっしゃいます。
MMPRTは臨床でそれほど頻度は高くありませんが、放置すると非常に深刻な経過をたどる疾患です。あるデータでは放置した場合の31%が30ヶ月(約2年半)以内に人工関節が必要になるとされており、適切な早期対応が将来の膝を守る鍵になります。
この記事では、センター北の膝痛専門 こころ整体院 byコレクトの視点から、MMPRTの基礎知識・フープ機能・特徴的な症状・危険因子・放置した場合の転帰、そして手術的治療の重要性を解説します。
- 内側半月板後根断裂(MMPRT)は半月板の後方の根元が断裂する疾患
- 断裂するとフープ機能が失われ、内側軟骨への圧力が「全摘出後と同等」になる
- 特徴的症状:ペインフルポッピング(突発的な内側の痛み+バキッという音)35〜87%に出現
- 50歳以上の女性・O脚・床生活に多い
- 放置した場合、31%が30ヶ月以内に人工関節が必要——早期の専門医受診・手術的治療が重要
- 階段を降りているとき突然「バキッ」という音がして膝の内側が痛くなった
- 膝の後内側に突発的な強い痛みが出た(ペインフルポッピング)
- 上記の症状の後、膝の内側の痛みが続いている
- 50歳以上の女性でO脚傾向があり、膝内側に慢性的な痛みがある
- MRIで半月板の後根断裂または変性が指摘されたことがある
これらの症状は放置すると急速に膝の変形・壊死が進行するリスクがあります。
内側半月板後根断裂(MMPRT)とは?
内側半月板後根断裂(MMPRT:Medial Meniscus Posterior Root Tear)は、内側半月板の後方の根元(後根付着部)が断裂する状態です。内側半月板の損傷の中でも特に重篤な経過をたどりやすく、見逃してはならない疾患の一つです。
後根が断裂するとフープ機能(後述)が失われ、膝関節内側の軟骨への接触圧が内側半月板を全摘出した後と同等レベルまで急激に増加します。この状態が続くと、変形性膝関節症・軟骨損傷・軟骨下骨骨折・大腿骨内側顆壊死へと急速に進行するリスクがあります。
半月板の「フープ機能」とは
半月板は膝関節内で衝撃吸収・荷重分散という重要な役割を担っています。この機能の鍵となるのがフープ機能(Hoop Function)です。
半月板は前角(前の根元)と後角(後ろの根元)の両方が脛骨にしっかり付着しています。この両端の付着があることで、膝に荷重がかかったとき圧縮力を水平方向に分散させる「フープ(輪っか)の張力」が生まれます。これによって軟骨への直接的な圧縮ストレスが軽減されます。
MMPRTでは後根付着部が断裂することでフープ機能が完全に失われます。この状態は機能的には内側半月板を全て切除したのと同じ状態になるため、内側の軟骨・軟骨下骨への過剰な圧縮負荷が慢性的にかかり続けます。
特徴的な症状——ペインフルポッピング
MMPRTにはペインフルポッピング(Painful Popping)という特徴的な症状があり、全症例の35〜87%に出現するとされています。
- 突発的な膝の後内側の痛みが突然出現する
- 同時に「バキッ」「ポキッ」という音を伴うことがある
- 特に階段の下りで起こりやすい
- 痛みはその後も続くことが多い
階段を降りているときに突然膝の内側が強く痛んだ・音がした、という経験がある場合はMMPRTを疑い、速やかに整形外科でMRI検査を受けることを強くお勧めします。
MMPRTの危険因子
以下の条件に当てはまる方はMMPRTの発症リスクが高まります。
ホルモン変化による組織の脆弱化が関与すると考えられています
体重増加による膝内側への慢性的な過負荷
内側への荷重集中が半月板後根への負担を増大させます
深屈曲動作が多いことで半月板後根への牽引・圧縮負荷が増大します
レントゲン所見。脛骨の傾斜角が大きいと後根への牽引力が増加します
これらの危険因子は変形性膝関節症の危険因子とも重複しており、膝の内側への負担が大きくなる状態全般がMMPRTのリスクを高めます。
また、MMPRTは50歳以上の女性に多い疾患ですが、スポーツをしている若い世代でも発症することがあります。特に前十字靭帯損傷(ACL損傷)との合併が起こり得るため、ACL損傷が疑われる場合は合わせてMMPRTの確認が必要です。
放置するとどうなる?——転帰と進行パターン
MMPRTを放置した場合の経過は非常に深刻です。フープ機能の消失により内側の圧力が増加し続けることで、以下のような転帰をたどる可能性があります。
| 転帰 | 内容 |
|---|---|
| 変形性膝関節症への進行 | 内側軟骨への過剰圧縮が持続することで急速に変形が進行します |
| 急性軟骨欠損 | 増大した圧力により軟骨が急激に損傷するケースがあります |
| 軟骨下骨骨折 | 軟骨の下の骨(軟骨下骨)に骨折が起こることがあります |
| 大腿骨内側顆壊死 | 軟骨下骨骨折を適切に治療しない場合、大腿骨内側顆が壊死します |
| 急速な内反変形(O脚)の進行 | 壊死が起こると内反変形が急速に悪化します |
| 人工関節置換術の必要性 | 放置例の31%が30ヶ月以内に人工関節手術が必要になったとされています |
全ての患者がこのような経過をたどるわけではありませんが、MMPRTは「経過観察で様子を見る」より「早期に適切な治療を受ける」ことが将来の膝を守る上で非常に重要です。
治療の選択——手術的修復の重要性
近年、関節鏡(関節内視鏡)を用いた後根断裂の手術的修復(Pull-through法など)が進歩しています。早期に後根を修復することでフープ機能を回復させ、軟骨への過剰負荷を防ぐことができます。
保存療法(安静・リハビリ・薬物療法)では後根の断裂そのものは修復されません。フープ機能の回復には手術的修復が必要であり、特に変形が軽度な早期段階での手術が長期的な膝の予後改善に有効とされています。
- 後根修復手術(Pull-through法):断裂した後根をトンネルを通じて骨に固定し直す方法
- 変形が進行したケースでは人工関節置換術が選択肢になります
- いずれの場合も整形外科専門医による正確な診断と手術適応の判断が必要です
ペインフルポッピングの経験がある・MRIで半月板の後根に異常が指摘されている・放置期間が長い方は、変形が軽度なうちに専門医を受診することが将来の膝機能を守る最善の選択です。
MMPRTが疑われる方へ。
膝痛専門 こころ整体院 byコレクトでも症状のご相談を承っています。適切な専門医への紹介・情報提供が可能です。
よくある質問(FAQ)
Q1. MMPRTはレントゲンで診断できますか?
レントゲンではMMPRTそのものを診断することはできません。MRIが診断に必要です。ただしレントゲンで脛骨内側傾斜・関節裂隙の狭小化・O脚の程度を確認することは治療方針を決める上で重要です。ペインフルポッピングの経験がある場合はMRI検査を依頼してください。
Q2. 保存療法(リハビリ・薬物療法)で治りますか?
保存療法では断裂した後根が修復されることはありません。痛みを緩和することはできますが、フープ機能の回復はできないため、内側軟骨への過剰負荷が続きます。変形が軽度な早期段階では手術的修復が長期的な膝の予後改善に最も有効とされています。
Q3. 手術を受けるタイミングはいつが良いですか?
一般的に変形性膝関節症の進行が軽度なうちに後根修復手術を受けることが推奨されています。変形が進行してからでは後根修復手術の適応外となる場合があり、人工関節置換術が選択肢になります。疑わしい症状があれば早期に専門医を受診してください。
Q4. スポーツをしている若い世代でも発症しますか?
はい。MMPRTは50歳以上の女性に多い疾患ですが、スポーツをしている若い世代でも発症します。特に前十字靭帯損傷(ACL損傷)との合併が起こり得るため、ACL損傷が疑われる場合は合わせてMMPRTの確認が必要です。
Q5. MMPRTと変形性膝関節症は別の疾患ですか?
別の疾患ですが、密接に関連しています。MMPRTを放置すると変形性膝関節症へ急速に進行するリスクがあります。また、変形性膝関節症の患者にMMPRTが合併していることもあります。いずれの場合も整形外科専門医による正確な診断が必要です。
センター北・横浜市都筑区で膝の内側の痛みにお悩みの方へ
センター北周辺エリアでも「階段で突然膝に痛みが出た」「膝の内側が痛くて治らない」というご相談をいただくことがあります。その中にはMMPRTが含まれている可能性があります。
MMPRTは整形外科・膝専門医によるMRI診断と手術適応の判断が必要な疾患です。膝痛専門 こころ整体院 byコレクトでは症状のご相談を承り、適切な専門医への橋渡しが可能です。
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まとめ
内側半月板後根断裂(MMPRT)は、放置すると急速に変形性膝関節症・壊死・人工関節へと進行するリスクのある重篤な疾患です。特に50歳以上の女性でペインフルポッピングの経験がある方は早期の専門医受診が不可欠です。
- 内側半月板後根断裂 = フープ機能の消失 = 全摘出後と同等の内側軟骨圧迫
- 特徴的症状:ペインフルポッピング(突発的な後内側の痛み+バキッという音)
- 危険因子:50歳以上の女性・肥満・O脚・床生活・脛骨内側傾斜増加
- 放置した場合31%が30ヶ月以内に人工関節が必要
- 早期の手術的修復(Pull-through法)が長期的な膝の予後改善に有効
- 疑わしい症状がある場合は速やかに整形外科・膝専門医を受診する
早期の専門医受診が膝を守ります。
症状のご相談は膝痛専門 こころ整体院 byコレクトへもお気軽にどうぞ。
参考文献
- Padalecki JR, et al. "Biomechanical consequences of a complete radial tear adjacent to the medial meniscus posterior root attachment site." American Journal of Sports Medicine, 2014; 42(3): 699–707.
- Marzo JM, et al. "Biomechanical and anatomical assessment after meniscal repair using 2 suture methods." Arthroscopy, 2009; 25(2): 187–193.
- Feucht MJ, et al. "Posterior root tears of the medial meniscus." Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy, 2015; 23(12): 3513–3521.
- Lim HC, et al. "Relationship between severity of osteoarthritis and the location of posterior root tears of the medial meniscus." Arthroscopy, 2013; 29(8): 1361–1369.
- Ozkoc G, et al. "Radial tears in the root of the posterior horn of the medial meniscus." Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy, 2008; 16(9): 849–854.
柔道整復師|人間科学修士
2006年にこころ整骨院を創業し、現在は国内外164拠点のヘルスケア事業を統括。臨床と経営の傍ら東亜大学大学院にて人間科学修士号を取得し、2025年に国際学術誌『PLOS ONE』に筋膜トリガーポイントと肩甲骨アライメントに関する研究論文を筆頭著者として発表。
- 研究者ID (ORCID): 0009-0002-5707-6121
- 主要論文 (PLOS ONE): Relationship between the asymmetry of the resting scapular position...

