揉んでも戻る肩こりと巻き肩:インナーマッスル低下と「滑走不全」まで含めた原因と対策

揉んでも戻る肩こりと巻き肩:インナーマッスル低下と「滑走不全」まで含めた原因と対策

揉んでも戻る肩こりと巻き肩:インナーマッスル低下と「滑走不全」まで含めた原因と対策

  • 公開日: 2026-02-10
  • 監修日: 2026-02-10
  • 監修・執筆: 安藝 泰弘(柔道整復師/こころ整体院グループ創業者)
※本稿は一般的な情報提供です。強い症状・急な変化がある場合は、必ず医療機関で評価を受けてください。
この記事のポイント

マッサージしてもすぐに戻る肩こりは、肩甲骨を支える「インナーマッスルの低下」と、筋膜同士が癒着する「滑走不全」が原因です。揉むだけでは解決しない根本的な巻き肩やこりを解消するための、GIFT式アプローチとセルフケアを解説します。

  • 原因:サボっているインナーマッスル(僧帽筋下部など)と、滑りが悪くなった筋膜。
  • 対策:癒着を剥がして「滑り」を良くし、サボり筋を鍛える。
  • 注意:強いマッサージは筋肉をさらに硬くする可能性があります。

「マッサージに行くとその時は楽になるけれど、翌日には元通り」「気づくと肩が内側に入り、猫背になっている」
そんな頑固な肩こりや巻き肩に悩んでいませんか?

一生懸命、固い肩を揉んでも治らないのは、アプローチする場所が間違っているからです。
実は、肩こりの本当の原因は、痛みを感じる肩の上部ではなく、**「肩甲骨を支える力の低下」と「組織の滑りの悪さ」**にあるのです。

あなたの肩こりタイプは?チェックリスト
  • マッサージは「強もみ」じゃないと効いた気がしない
  • 腕を上げると、肩も一緒に上がってしまう
  • 背中で手を組むことができない
  • 呼吸が浅く、気づくと息を止めていることがある
  • デスクワーク中、頭が前に出ている(ストレートネック気味)

これらはすべて、肩周りの機能不全、特に「滑走不全(かっそうふぜん)」のサインです。

なぜ「揉んでも戻る」のか?2つの真犯人

結論:「サボっているインナーマッスル」と「へばりついた筋膜」が原因です。

1. インナーマッスルの低下(サボり筋)

肩甲骨は本来、背中の筋肉(僧帽筋下部や前鋸筋)によって正しい位置に引き寄せられています。しかし、これらのインナーマッスルがサボって弱くなると、肩甲骨を支えきれず、肩が内側へ巻いてしまいます。
結果、首や肩の上部(僧帽筋上部)が「私が支えなきゃ!」と過剰に頑張り、カチコチに固まってしまうのです。これが肩こりの正体です。

2. 滑走不全(滑りの悪さ)

筋肉や神経は、「筋膜」などの膜に包まれており、本来は互いにツルツルと滑り合うことでスムーズに動きます。
しかし、長時間の不良姿勢などでこの滑りが悪くなると、組織同士がベタッと癒着してしまいます。これを「滑走不全」と呼びます。
例えるなら、サイズの小さいシャツを何枚も重ね着している状態です。いくらマッサージで筋肉をほぐしても、この「縮んだシャツ(膜の癒着)」を直さない限り、すぐにまた窮屈な状態に戻ってしまうのです。

GIFTの視点:肩こり・巻き肩へのアプローチ

当院(こころ整体院グループ)独自の「GIFT」では、肩こりを単なる筋肉疲労とは捉えません。

  • G (Gliding - 滑走):胸の筋肉(小胸筋)や肩甲骨裏の癒着を剥がし、滑走不全を解消します。これが「戻り」を防ぐ鍵です。
  • I (Inner - インナー):サボっている僧帽筋下部や前鋸筋にスイッチを入れ、肩甲骨を正しい位置でキープできる筋力をつけます。
  • F (Form - 骨格・姿勢):巻き肩によって崩れた頭の位置や背骨のカーブを修正します。
  • T (Trigger Point - 筋肉のしこり):頑張りすぎて固まった肩の上部の緊張を、トリガーポイント療法で緩めます。
▼【詳しく知りたい方へ】医学的なメカニズム(クリックで開く)

肩甲骨の運動異常(Scapular Dyskinesis)と滑走不全について解説します。

1. Scapular Dyskinesis(肩甲骨運動異常)
肩甲骨の安定化筋である僧帽筋下部(Lower Trapezius)や前鋸筋(Serratus Anterior)の機能不全は、肩甲骨の下制・後傾を妨げ、巻き肩やインピンジメント症候群のリスクを高めます。Kiblerら(2003)はこれをScapular Dyskinesisと定義しています。
2. 滑走不全(Gliding Dysfunction)
筋膜(Fascia)や末梢神経は、周囲の組織に対して滑走することで正常な運動を保証します。炎症や不動によりヒアルロン酸が凝集・高粘性化すると、筋膜間の滑走性が低下(Densification)し、可動域制限や疼痛を引き起こします(Stecco et al., 2013)。
3. Upper Crossed Syndrome(上位交差症候群)
Jandaが提唱した姿勢パターンで、大胸筋・僧帽筋上部の「短縮・過緊張」と、深層屈筋・僧帽筋下部の「弱化・延長」が交差するように生じ、頭部前方変位(FHP)を引き起こします。

【実践編】癒着を剥がして鍛える!セルフケア

1. 胸の癒着剥がし(Glidingケア)

鎖骨の下をほぐすイラスト
鎖骨の下、腕の付け根あたり(小胸筋)を指で押さえながら、腕をゆっくり回します。痛気持ちいい強さで30秒。

2. 肩甲骨寄せエクササイズ(Innerトレーニング)

手のひらを外側に向け、肘を脇腹に引きつけるようにして「W」の字を作ります。肩甲骨を背骨に寄せるイメージで10秒キープ×5回。肩が上がらないように注意しましょう。

3. 壁を使った胸開きストレッチ

壁に片手をつき、体を反対側にねじって胸の前を伸ばします。縮こまった大胸筋を伸ばし、巻き肩をリセットします。

監修者のひと言:「肩は揉めば揉むほど固くなります」
「肩が凝ったから強く揉んで!」というリクエストをよく頂きますが、実は逆効果です。強い刺激は筋肉の繊維を傷つけ、修復する際により硬い組織(瘢痕組織)になってしまいます。「揉む」のではなく「動かす・滑りを良くする」ことが、肩こり卒業への近道です。

やってはいけない!3つのNG行動

⚠ 巻き肩を悪化させる行動
  • 強引なマッサージ:筋肉の防御反応を招き、余計に固くなります。
  • 肘をついてスマホを見る:背中が丸まり、肩甲骨が外に開いて固定されてしまいます。
  • 胸を張ろうとして腰を反る:巻き肩を治そうとして、腰を反らせてしまう方が多いです。肋骨を締めたまま肩甲骨だけを寄せましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 巻き肩は矯正ベルトで治りますか?

A. 一時的なサポートにはなりますが、根本解決にはなりません。ベルトに頼りすぎると、自分のインナーマッスルがさらに弱り、外した時に余計に姿勢が崩れる恐れがあります。

Q. どのくらいで良くなりますか?

A. 個人差はありますが、滑走不全の解消(G)と姿勢矯正(F)を集中的に行えば、数回の施術でも「肩が軽い」状態を実感できます。定着させるには3ヶ月程度の継続的なケアが理想です。

Q. 運動不足でも大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です。まずは激しい運動ではなく、今回ご紹介したような「滑りを良くするケア」から始めてみてください。

参考文献

  • [1] Kibler WB, et al. "Scapular dyskinesis and its relation to shoulder pain". J Am Acad Orthop Surg. 2003.
  • [2] Stecco C, et al. "Hyaluronan within fascia in the etiology of myofascial pain". Surg Radiol Anat. 2011.
  • [3] Page P, et al. "Assessment and Treatment of Muscle Imbalance: The Janda Approach". Human Kinetics. 2010.