揉んでも戻る肩こりと巻き肩:インナーマッスル低下と「滑走不全」まで含めた原因と対策
マッサージしてもすぐに戻る肩こりは、肩甲骨を支える「インナーマッスルの低下」と、筋膜同士が癒着する「滑走不全」が原因です。揉むだけでは解決しない根本的な巻き肩やこりを解消するための、GIFT式アプローチとセルフケアを解説します。
- 原因:サボっているインナーマッスル(僧帽筋下部など)と、滑りが悪くなった筋膜。
- 対策:癒着を剥がして「滑り」を良くし、サボり筋を鍛える。
- 注意:強いマッサージは筋肉をさらに硬くする可能性があります。
「マッサージに行くとその時は楽になるけれど、翌日には元通り」「気づくと肩が内側に入り、猫背になっている」
そんな頑固な肩こりや巻き肩に悩んでいませんか?
一生懸命、固い肩を揉んでも治らないのは、アプローチする場所が間違っているからです。
実は、肩こりの本当の原因は、痛みを感じる肩の上部ではなく、**「肩甲骨を支える力の低下」と「組織の滑りの悪さ」**にあるのです。
- マッサージは「強もみ」じゃないと効いた気がしない
- 腕を上げると、肩も一緒に上がってしまう
- 背中で手を組むことができない
- 呼吸が浅く、気づくと息を止めていることがある
- デスクワーク中、頭が前に出ている(ストレートネック気味)
これらはすべて、肩周りの機能不全、特に「滑走不全(かっそうふぜん)」のサインです。
なぜ「揉んでも戻る」のか?2つの真犯人
1. インナーマッスルの低下(サボり筋)
肩甲骨は本来、背中の筋肉(僧帽筋下部や前鋸筋)によって正しい位置に引き寄せられています。しかし、これらのインナーマッスルがサボって弱くなると、肩甲骨を支えきれず、肩が内側へ巻いてしまいます。
結果、首や肩の上部(僧帽筋上部)が「私が支えなきゃ!」と過剰に頑張り、カチコチに固まってしまうのです。これが肩こりの正体です。
2. 滑走不全(滑りの悪さ)
筋肉や神経は、「筋膜」などの膜に包まれており、本来は互いにツルツルと滑り合うことでスムーズに動きます。
しかし、長時間の不良姿勢などでこの滑りが悪くなると、組織同士がベタッと癒着してしまいます。これを「滑走不全」と呼びます。
例えるなら、サイズの小さいシャツを何枚も重ね着している状態です。いくらマッサージで筋肉をほぐしても、この「縮んだシャツ(膜の癒着)」を直さない限り、すぐにまた窮屈な状態に戻ってしまうのです。
GIFTの視点:肩こり・巻き肩へのアプローチ
当院(こころ整体院グループ)独自の「GIFT」では、肩こりを単なる筋肉疲労とは捉えません。
- G (Gliding - 滑走):胸の筋肉(小胸筋)や肩甲骨裏の癒着を剥がし、滑走不全を解消します。これが「戻り」を防ぐ鍵です。
- I (Inner - インナー):サボっている僧帽筋下部や前鋸筋にスイッチを入れ、肩甲骨を正しい位置でキープできる筋力をつけます。
- F (Form - 骨格・姿勢):巻き肩によって崩れた頭の位置や背骨のカーブを修正します。
- T (Trigger Point - 筋肉のしこり):頑張りすぎて固まった肩の上部の緊張を、トリガーポイント療法で緩めます。
▼【詳しく知りたい方へ】医学的なメカニズム(クリックで開く)
肩甲骨の運動異常(Scapular Dyskinesis)と滑走不全について解説します。
- 1. Scapular Dyskinesis(肩甲骨運動異常)
- 肩甲骨の安定化筋である僧帽筋下部(Lower Trapezius)や前鋸筋(Serratus Anterior)の機能不全は、肩甲骨の下制・後傾を妨げ、巻き肩やインピンジメント症候群のリスクを高めます。Kiblerら(2003)はこれをScapular Dyskinesisと定義しています。
- 2. 滑走不全(Gliding Dysfunction)
- 筋膜(Fascia)や末梢神経は、周囲の組織に対して滑走することで正常な運動を保証します。炎症や不動によりヒアルロン酸が凝集・高粘性化すると、筋膜間の滑走性が低下(Densification)し、可動域制限や疼痛を引き起こします(Stecco et al., 2013)。
- 3. Upper Crossed Syndrome(上位交差症候群)
- Jandaが提唱した姿勢パターンで、大胸筋・僧帽筋上部の「短縮・過緊張」と、深層屈筋・僧帽筋下部の「弱化・延長」が交差するように生じ、頭部前方変位(FHP)を引き起こします。
【実践編】癒着を剥がして鍛える!セルフケア
1. 胸の癒着剥がし(Glidingケア)
2. 肩甲骨寄せエクササイズ(Innerトレーニング)
手のひらを外側に向け、肘を脇腹に引きつけるようにして「W」の字を作ります。肩甲骨を背骨に寄せるイメージで10秒キープ×5回。肩が上がらないように注意しましょう。
3. 壁を使った胸開きストレッチ
壁に片手をつき、体を反対側にねじって胸の前を伸ばします。縮こまった大胸筋を伸ばし、巻き肩をリセットします。
やってはいけない!3つのNG行動
- 強引なマッサージ:筋肉の防御反応を招き、余計に固くなります。
- 肘をついてスマホを見る:背中が丸まり、肩甲骨が外に開いて固定されてしまいます。
- 胸を張ろうとして腰を反る:巻き肩を治そうとして、腰を反らせてしまう方が多いです。肋骨を締めたまま肩甲骨だけを寄せましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 巻き肩は矯正ベルトで治りますか?
A. 一時的なサポートにはなりますが、根本解決にはなりません。ベルトに頼りすぎると、自分のインナーマッスルがさらに弱り、外した時に余計に姿勢が崩れる恐れがあります。
Q. どのくらいで良くなりますか?
A. 個人差はありますが、滑走不全の解消(G)と姿勢矯正(F)を集中的に行えば、数回の施術でも「肩が軽い」状態を実感できます。定着させるには3ヶ月程度の継続的なケアが理想です。
Q. 運動不足でも大丈夫ですか?
A. はい、大丈夫です。まずは激しい運動ではなく、今回ご紹介したような「滑りを良くするケア」から始めてみてください。
参考文献
- [1] Kibler WB, et al. "Scapular dyskinesis and its relation to shoulder pain". J Am Acad Orthop Surg. 2003.
- [2] Stecco C, et al. "Hyaluronan within fascia in the etiology of myofascial pain". Surg Radiol Anat. 2011.
- [3] Page P, et al. "Assessment and Treatment of Muscle Imbalance: The Janda Approach". Human Kinetics. 2010.






